残像メンタルトレーニングメソッド

残像メンタルトレーニングで
集中力を高め能力を最大限発揮する

カートの中 精算する

明けてみれば、やっぱり…

2011年11月10日

人間の表と裏という話になると、「二面性」という言葉が思い浮かぶ。
すると、「昼間の自分」と「夜の自分」という区分けに思い至る。
たとえばこんな具合である。

人みな寝静まった深夜のこと、私はこう決意した。
まったく、こんなひどい施主はいない。
言うことがころころ変わるし、態度は尊大。
あれこれ細かい注文をつけるくせに、費用はなんとか値切ろうとする。
一体、何回図面を描き直させれば気が済むのだろうか。
あんな奴を相手にしてると、気がめいるし、時間の無駄遣いもはなはだしい。
えーい、やめた。
明日、こちらからきっぱり言ってやろう。
「これ以上は付き合いきれません。ほかを探してください」ってね。

翌朝、私は厳しい顔をして打ち合わせに向かう。
ふん、相変わらず偉そうな奴だ。
「それでね、高岸さん。
ここのところ、もう少しこういうふうにしたいんだが、なんとか考えてもらえんかね」
そこで私は答える。
「はいはい、わかりました。そうですねー、ま、なんとかなるでしょう」
嫌な奴だが仕方がない。
この不景気な世にあって、久しぶりのまとまった仕事だ。
ここで短気を起こしたら、事務所の維持も危うくなるぞ……と、そう頭の中では考えている。

また別の深夜のこと、私はこう決意して興奮した。
かねがね気に入っているあの建設会社の受付の子。
この頃、また一段ときれいになったじゃないか。
それに、今日の俺に対するしぐさはどうだ。
あれは、俺を憎からず思っている笑顔だなあ。
ようし、決めた。
明日は奮発して、ちょっとしたフレンチ・レストランにでも誘うことにするか。
ふふ、こいつは楽しみだ。

そして翌朝、私は意気揚々と建設会社に向かう。
受付で、にこやかに手を挙げて挨拶。
「あっ、高岸さん、おはようございます。今日も打ち合わせですか」
「あっ、いや、ちょっと急な用事を思い出したもので。設計課にね」
すごすごと用もないのに設計課へ向かいながら、私はこう考えている。
いやいや、彼女が俺に特別な好意を抱いているはずがないじゃないか。
当たり前だろう。
私はさえない中年の妻子持ちだし、彼女は美人で若い。
うっかり誘ってけんもほろろに断られでもしたら、とんだ三枚目。
やれやれ、危ないところだった。

とまあ、私は飽きもせず、こんなことを繰り返している。

いや、私だけではあるまい。
人間とは面白いもので、夜、一人きりでいると、実に大胆な発想が浮かぶ。
昼間には思いもつかない断固たる決断も平気で下す。
ところが、夜が明けて現実に直面すると、そんな発想や決断は、たちどころに雲散霧消してしまうのである。

一体、どうしてこんなことになるのだろうか。