残像メンタルトレーニングメソッド

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科学的な自己コントロール法

2011年09月15日

そこで、「バイオ・フィードバック法」に戻ると。

これは、普通は知覚するのが極めて困難な生体(バイオ)の生理過程に関する情報を、機械の助けで知覚可能な情報に変換して「フィードバック」し、それを手がかりに、生理過程を意図的にコントロールする手法を会得すること……。

前に述べたような人間の「フィードバック」の仕組みをみると、外界の情報は五感、つより視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚を通じて入力される。
この入力があるからこそ、出力の調整が可能なわけだ。
ところが、生体の生理過程に関する情報、たとえば気分の良し悪しや梢神状態といったものは、五感ではっきり捉えることができない。
したがって、自分が今どんな状態にあるかが入力できず、出力の調整もままならないことになる。

しかし、こうした情報は、脳波、筋電位、血圧、心拍数、呼吸数などの変化に表れる。
そこで、これらの数値を機械で測り、視覚や聴覚などの知覚しやすい情報に変換して入力する方法が考え出された。
きっかけは、自律神経系の病気である心身症や神経症、また高血圧や不安・緊張といった症状の治療にあった。

たとえば、アメリカの心理学者ブレジンスキーは、筋収縮性頭痛(筋肉が収縮することによって起こる頭痛)の患者の筋電位を記録し、その電圧がある程度以上になるとピーッという信号音が出るような装置を考え出した。
この信号音は、電圧が高くなるほど(筋肉の収縮が強くなるほど)高くなる。
つまり患者は、音の高低を聞くことによって、自分の筋肉の収縮具合を知ることができるというわけだ。

そこで、信号音が高くなると、医師は患者に低くするように命じる。
ある患者は、大きく深呼吸をするといった方法で音を低くする。
これを何回も繰り返していると、やがてその患者は、大きく深呼吸をすることによって、いつでも自分の筋肉の収縮力を弱めることができるようになる。
こうして、筋収縮性頭痛の治療に成功した。

同様のことを脳波について行ったのが、カリフォルニア大学の神経生理学者ジョー・カミヤである。
人間は、α波が増加すると一般にリラックス状態に入り、不安感や緊張感が消え去ることに着目したカミヤは、α波の「フィードバック」を思いついた。

そのために彼がどんな訓練法を行ったかというと、まず、被験者の額に脳波を探知するセンサーを取りつけ、被験者本人にも、自分の脳波が今、どんな状態にあるのかわかるようにしておく。
そして、α波が出たときだけ、光を点灯させるか、音を出す。

訓練を続けるうちに、被験者には、自分がどういう状態にあるときにα波が出るのか、次第にわかるようになってくる。
もちろん、それは人によって違う。
ある人は、好きな音楽を口ずさんでいるときにα波が出るし、別の人は、生まれ故郷の風景を思い浮かべているときにα波が出る。
いずれにせよ、いったんその傾向さえつかんでしまえば、あとは楽なものだ。
格別な努力や鍛練をしなくても、好きな音楽を口ずさんだり、生まれ故郷の風景を思い浮かべたりするだけで、自在にα波を出すことができるようになるのである。

カミヤのこの方法は、アメリカで「インスタントZEN(禅)」ともてはやされた。
カミヤ自身が日系二世ということもあったろうが、α波の境地、すなわち東洋の禅僧が長期間にわたる修行によって獲得した瞑想の境地を、機械の助けを借りて、ほんの数ヵ月の訓練で達成し得るという点が大きな反響を呼んだのだろう。

メンタル・トレーニングとしての「バイオ・フィードバック法」も同じである。

射撃選手の例で言えば、やはり頭に脳波探知センサーを取りつけ、動いたり、静止したりといろいろな状態に自分を置いてみて、最高の状態に近くなったと感じたとき、脳波が映し出されたモニターを見る。
同時に、血圧や呼吸数、心拍数も機械でチェックしておく。
そして、トレーニング中にこれと同じ脳波、血圧、呼吸数、心拍数が出たとき、自分の好きな歌をうたう。
これを、何百回、何千回と繰り返す。

そうすると、不思議なことに歌と脳波が連動するようになる。
一度その連動の回路が出来上がり、訓練によってその回路が太くなると、今度は、歌をうたいさえすれば、最高の状態の脳波、血圧、呼吸数、心拍数が実現できるようになる。
こうして、歌をうたうという単純な「ルーティン」が、最高のパフォーマンスを表現する鍵となるのである。