R/C/T 残像メンタルトレーニング

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高岸弘のコラム

2010.08.11
高岸弘のコラム

まだ、たったの三〇パーセント!

今述べた脳の発達と衰退の過程は、数十年前からほぼ定説となっているものだ。
一方、人間の脳についてはまだまだわからないことだらけ、とも言われる。
何しろ、脳の仕組みを調べるには、生きている人間をまるごと実験材料にしなければならないのであるから、その困難さを考えれば、ほとんど解明されていないという話も充分にうなずける。

余談だが、私は建築家であって、脳の研究家ではない。
それでも、ひょんなことから人の脳の仕組みに関心を持ち、あれこれ調べたり考えたりしている。

その結果を文章にして、ときどき学会で発表したりもしている。
眉に唾されそうだから念のために挙げておくと、日本脳科学会に「残像現象に対応するα波減弱とその学習」「視覚残像追跡時の脳波」の二つ。
日本脳波筋電図学会に「視覚残像追跡トレーニングによる注意状態の調節」の一つ。
もっとも、協力してくれた学者や医者との連名ではあるが……。

別に自慢したいわけではなくて、私のような者でも隅っこに名を連ねられるぐらい、脳研究の世界は何でもありということが言いたいのである。
まさに百花繚乱、百家争鳴。
こんなことを言うと真面目に(私も真面目だが)研究している専門家は気を悪くするかもしれないが、前記の学会の会報を読んでみても、確かに「言いたい放題」の印象がある。
その説が正しいか正しくないかは、相当の時を経てみなければ証明できないだろう。

つい最近出版された『脳から老化を止める』(高田明和著・カッパブックス)という本にはこんなことが書かれていた。

カリフォルニアのサーク研究所に留学していたスウェーデンのエリクソン博士は、五七歳から七一歳の末期癌患者に、放射能を持たせたブロクスウリジンという物質を注射した。
この物質は、細胞が分裂するとその中に取り込まれ、放射能を発する。
つまり、放射能を発する細胞の存在が認められれば、それは分裂した細胞ということになる。
そして—-。

被験者が亡くなったあとに脳細胞を調べると、全員から、海馬の部分に分裂した細胞が見つかったというのである。
海馬は、大脳辺縁糸の一部を成し、視覚や聴覚、触覚で得た情報を一時的にたくわえる場所とされる。

これは朗報である。
これまで、誕生後は増えず、二〇歳を過ぎれば減る一方だと言われていた脳細胞が、分裂して増えていることがわかったのだから。
それも七一歳の人まで。

また、『脳とテレパシー』(濱野恵一著・KAWADE夢新書)という本には、「人間は自分たちの脳を、そのもてる力の三〇パーセントも使っていない」という一文がある。
「あのアインシュタインですら、わずか三〇パーセントの脳を働かせていただけだという説もあるくらいだ」とまで言われると、私たちが使っているのは一体どれだけなのかと呆然とする。

これも、本当だとしたら朗報である。
さんざん勉強し、働き、生殖行為を行い、喜怒哀楽の限りを尽くして死に至ったとしても、まだ、たったの三〇パーセント!
しかも、この本の著者によれば、使われていない”脳力”の大半は、どうやら「直観」とか「ひらめき」とか「インスピレーション」とか呼ばれるものに関係しているらしい。
これこそ、中高年諸氏が、自分にはもう縁がないとあきらめていたものではないだろうか。

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