R/C/T 残像メンタルトレーニング

R/C/T 残像メンタルトレーニング

高岸弘のコラム

2010.10.19
高岸弘のコラム

謎のFmθ波

「残像」という現象に科学的なメスが入るようになったのも、このメンタル・トレーニングが注目されている理由のひとつである。
「見える」という体験としての「残像」の存在が初めて科学的に証明されたのは、私の知る限りでは1995年のこと。
日立製作所、東京大学医学部、東京警察病院が共同で行った実験で、人間が残像を見ていると感じるとき、脳の特定部分が活性化していることが明らかになった。
その特定部分とは、大脳の視覚第四野。
視覚の色情報を処理すると考えられている部位で、ここが活性化しているということは、目は閉じられていても、脳は確かに何かを「見ている」ということになる。
それが残像というわけだ。

このことは、脳波の測定においても確かめられている。

人間の脳波は、ごく単純にいえば、目を開けて通常の活動をしているときはβ波支配、目を閉じて休息状態に入っているときはα波支配になるとされる。
ところが、大阪府立大学の山口雄三名誉教授の研究によると、特殊にデザインされた図柄を十数秒ほど注視してから目を閉じると、閉じたあともしばらくは「α波減弱」の状態、つまりβ波支配が続くという。
これは、ちょうど残像が浮かんでいる時間に相当する。
残像が消えると完全なα波支配になり、再び残像が浮かぶと、またα波減弱に戻る。

となると、次なる課題は、こうして存在が証明された「残像」が、脳にいかなる影響を与えているのか、ということであろう。

よく知られているように、脳波はその周波数によって何種類かに分けられる。
どの脳波がどんなときに現れるかは、そのときの人間の意識のあり方に関係している。

一般的には次のように言われている。

・興奮・いらいら状態………γ(ガンマ)波
・通常の活動状態……… β(ベータ)波
・リラックス状態……… α(アルファ)波
・うとうと・ぼんやり状態……… θ(シータ)波
・熟睡状態……… δ(デルタ)波

このうちのα波が現れているときが、人間は最も高次の活動、つまり潜在能力を発揮しやすいという説が流れ、数年前、一種の「α波ブーム」とでもいうべきものが巻き起こった。
最近では「癒し系」などという言葉も生まれ、意識的にα波の状態に置くために、音楽や映像に関するさまざまな商品が開発されている。

ところで。

脳細胞が活動すると電気的な興奮が起こり、そこに磁界が生じるという。
この磁気の強さを脳磁計という最先端の機械を用いて計測すると、脳波と同じ波の形をした「脳磁波」と呼ばれるものが現れる。
α波、β波……と、用語も脳波とまったく同じものが使われる。

脳磁波は、頭皮側から計測できるという利点がある。
脳波検査のように頭皮に針を刺す必要がないから患者に負担をかけなくて済む、ということで、昨今は、てんかんや脳腫瘍、脳梗塞などの診断に盛んに利用されているらしい。

この脳磁波について、私は3年前、ある雑誌の中に興味深い記事を発見した(『日経ヘルス』1998年8月号・日経BP社)。

脳磁計を使って人間の脳を調べている岡崎国立共同研究機構生理学研究所の佐々木和夫所長は、ひょんなことから、集中力と脳磁波(ということはつまり脳波)の関係に注目することになった。
自ら実験台になり、目をつぶって暗算をしていると、脳磁計のモニターにθ波が現れた。
θ波は、普通は「うとうと・ぼんやり状態」か、てんかんなどの異常があるときに出るもので、暗算などという集中力を要する活動中に出るものではない。

おかしいと思った佐々木所長が本格的に研究を開始すると、暗算のほか、音楽のイメージ演奏、座禅やヨーガの瞑想などのときにも、前頭葉の部分からθ波が出ることがわかった。
佐々木所長は、この脳磁波を「Fmθ波(フロント・メンタル・θ波:前頭知的θ波)」と名づけるとともに、その後の研究で、被験者のどれだけ集中できたかという主観と・Fmθ波の出る結果とに深い相関関係があることも突き止めた。

Fmθ波なら、私もそれまでに耳にしたことがあった。
前に述べた山口雄三名誉教授の研究報告の中に、残像出現時、少数例ながらFmθ波を認めるケースがあった、と記されていたからである。

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