Fmθ波には残像カードが有効
佐々木所長がFmθ波を見出したという音楽のイメージ演奏、座禅やヨーガの瞑想などは、α波出現の代表例ともされている。
であればこそ、これらのトレーニングが盛んに奨励され、また、各種の音楽を録音したCDが市場をにぎわしているのではないか。
この疑問に対する佐々木所長の答えは、こうだ。
「α波は確かにリラックスしたときに出ます。
しかし、それだけで、いわば脳のアイドリングの役割ですね。
集中とは関係ないんです。
ただ、集中といっても、好奇心や好き嫌い、意志、やる気などいろんな要素がからんで生まれますが、このFmθ波は、特に意志の力で集中したときによく出ますね」
(『日経ヘルス』同)
まさに我が意を得たり。
α波を出すリラックス状態は脳のアイドリング、しかるのちに本格的な集中に入る。
これは、リラックス・カードから集中カードへと移る残像メンタル・トレーニングそのものではないか……と一人ほくそ笑んでいる私を尻目に、『日経ヘルス』の記事はさらに続く。
なんと、俳優の辰巳琢郎氏を被験者にして、脳磁計を用いて集中力の度合いを測定しようというのである。
そのために、辰巳氏には次の七つの課題が与えられた。
①100から順番に3を引いていく暗算
②カードを見つめて残像を追いかける
③本人が魅せられつつあるという詰め碁
④俳優として得意と思われる台詞の暗記
⑤本人がワイン通なのでワインのテイスティング
⑥所長の興味で怒りの感情
⑦所長の興味で悲しみの感情
以下は、それに対する佐々木所長のコメント。
「少し弱めだが、暗算、残像カード、詰め碁でFmθ波が前頭葉に出ていますね。
本人はカードは失敗したと言っていたが、いちばん出方が顕著ですよ」(同)
「ワイン、怒りや悲しみの感情移入では、前頭葉とは違う側頭葉にやや高めのθ波が出ていました。
これは感情的な興奮に伴って出る、Fmθ波とはまた違う種類のθ波です」(同)
もちろん、辰巳氏本人の「集中した」という実感とデータとの食い違いはあるし、たった一人のケースから何かの傾向を読み取ろうとするのが暴挙であることぐらいは、いかに私でも承知している。
それでも、残像カードからここまで顕著なFmθ波が引き出されているのには、正直言って驚いた。
当然のことながら、この実験に私たちは何の干渉もしていない。
事前に『日経ヘルス』の編集部から、残像カードについて簡単な電話取材を受けてはいたが、編集部としては、「ホンマかいな」との思いもあって実験項目に加えたのだろう。
佐々木所長の「Fmθ波は、特に意志の力で集中したときによく出ますね」とのコメントが、案外、残像カードの本質を言い当てているのかもしれない。
私たちにとっては、図らずも「メデタシ、メデタシ」の結果となった。