時間の短さにメゲないで・・・
さて、ここまで、何やら宣伝めいた調子になることを恥ずかしがりもせずに書き進めてきたが、私はもちろん、残像カードが「リラックス」と「集中」を得る唯一無二の手法であると言っているわけではない。
すでに自分なりの手法を身につけている人は、それでよし。
かつての私のように、日々ジタバタしている方がおられるようなら、おすすめしたいと思うだけである。
すでに幾多のメンタル・トレーニングに挫折して中高年に達した方には、ぜひともおすすめしたい、と言いたいところだが、ここで少し残念な事柄を述べなければならない。
というのは、残像の見える時間が、どうやら年齢とともに短くなるらしいのである。
どの年代も男女間でほとんど差がない反面、男女とも、30歳代から著しく時間が短くなる傾向が出ている。
しかし、サンプル数があまりにも少ないし、見える時間には個人差もあるから、一応の目安程度に考えていただくとありがたい。
そして、たとえ3O歳代以降でも、トレーニングを積んだあとでは飛躍的に時間が延びているという点に注目していただきたい。
励ましの意味もこめて実例をご紹介すると、現在、関西地方を中心に百店舗以上のスーパーを展開する「万代」の下元慶朗社長(66歳)。
彼は13年前から残像カードを使用している。
初めのうちは、あっという間に残像が消えて不信感を抱いたそうだが、1分近くも見えるようになってからは、合同会議の前、大事なメールを打ったり書類を書いたりする前、ゴルフの前などに、リラックスと集中のカードで3回ずつ残像を浮かび上がらせているという。
その結果、「会議では、簡にして要を得た話ができるようになったし、言い忘れや言い淀みもほとんどなくなった。
メールや書類の場合には書き直しが少なくなったし、ゴルフでは、各ホールで何をしなければならないのかという目標がはっきり描けるようになった」と、効果のほどを話してくれた。
プロ野球・横浜ベイスターズの元広報部長で、現在は親会社「マルハ」の取締役を務める内山俊夫氏(67歳)も、残像カードの愛用者である。
リラックス→集中→目的意識という段階を踏むのが実にしっくりくるそうで、やはりゴルフの腕前を上げるのにひと役買っていると断言する。
冗談で、「女性を口説くのに使っているんではないでしょうね」と水を向けると、「いや、そういうときに使うと、いっぺんにシラフになってしまうから役に立たない」というから面白い。
ちなみに、横浜ベイスターズでは、三浦大輔投手をはじめ数人の投手が使っているようだとのこと。
私たちのすすめで、広島カーブの横山竜士投手も使ってくれている。
残像の見える時間はまた、体調や精神状態によっても変わってくる。
心身ともに快調なときは長く見えるし、疲れていたり、何かと悩みごとが多かったりするときは、どうしても短くなる。
これを逆手にとって、選手の心身状態を知るために残像カードを利用している高校野球の指導者もいるほどだ。
私自身、確かに、日によって見える長さが違う。
だから、朝、残像の浮かんでいる時間が極めて短いときは、たまっている事務処理の仕事などに精を出すことにしている。
朝から設計の基本構想を考えたり、斬新なアイデアを探し求めたりするのは、しつこいくらいに残像が浮かび続けているときに限る。
あなたはどうだろうか。
仮に残像の見える時間が短かったとしても、嘆くには及ばない。
若い方であれば、ちょっと疲れているのかもしれないと考え、日を改めて挑戦していただきたい。
また、中高年の方であれば、それが普通なのだと考え、これからトレーニングに励んでいただきたい。
もし、いくらトレーニングしてもさっぱり効果が表れないというなら、それは仕方がない。
著者に罵詈雑言を浴びせていただきたい。
そしてまた、新たな模索の道へと旅立っていただきたい。