R/C/T 残像メンタルトレーニング

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高岸弘のコラム

2011.10.19
高岸弘のコラム

誰もが最も集中するとき

ところで、五感の刺激ということになれば、それらを別々にではなく、どうせなら全部を同時に刺激したほうが、より一層の効果が期待できるというものだ。
木の棒を机上に常備している知人は、少なくとも二つの感覚器官を活用していた。

好きな色を見て、好きな音楽を聴いて、好きな香りを嗅いで……。
これらが同時に行える方法はないものか……と考えついたのが、特製ペンダント。

これには自分の好きな色が塗ってある。
握ると、手の中にしっくりとおさまる。
そして手の熱でスイッチ・オンし、好きな音楽と香りが発せられる。
裏側をちょっとなめると、大好きな桃の味がする……。
これをいつも首にぶらさげて、いざというときにお世話になるのである。
なかなかの妙案だと思うのだが、まだ商品化の話はない。

ついでに触れておくと、人間の日常生活のなかには、五感のすべてを動員する行為が二つある。
それは何だとお思いだろうか。

食事とセックスである。

幸福な食事は、味覚だけでするものではない。
色とりどりの野菜を添えたり、盛りつけを工夫したりするのは目で見て楽しむためだし、台所から漂ってくるおいしそうな香りは間違いなく食欲を刺激する。
肉のジュージュー焼ける音は耳に心地よいし、アルコールが注がれる音はささやかな興奮を誘う。
ふっくらしたパンの手触りや、新鮮な刺身を口に含んだときの歯ごたえも欠くことはできない。

一方のセックスはどうか。
これも、肌の触れ合いや挿入感だけが嬉しいのではない。
互いの肉体を見つめ合うのは楽しいし、耳元でのささやきや喘ぎ声が刺激的なのは、どなたもご承知だろう。
細かな描写は差し控えるが、香りや「味わい」だってないがしろにしていいはずがない。
これらのすべてがあいまって、幸福なセックスが成り立つのだと思う。

そして、食事とセックスこそ、私たちの普段の生活のなかで、まったく無意識に、苦もなく集中していられる時間なのである。
それは、そこに五感のすべてが動員されているからにほかならない。

というわけで、私は「残像カード」のほかに、五感のすべてを刺激してくれる簡単なグッズはできないものかと、今夜も夢想している。

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