R/C/T 残像メンタルトレーニング

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【コラム】残像メンタルトレーニングの誕生

08.満たすべき三つの精神的要素

残像メンタルトレーニングの誕12

住宅とは、まず、家族みんながリラックスする空間である。外での汚れを落とし、疲れた体に休息を与え、緊張し切った精神を解きほぐしてゆったりとした気分で過ごせる空間。
これは誰しも気がつくことで、この条件にそぐわない住宅は、どんな構造体を持っていたとしても、明らかに失格であろう。
だが、これだけではまだ充分とは言えないと私は思う。リラックスしたまま永遠に家に居続けるのならこれほど幸せなことはないが、不幸(?)なことに、私たちはまた外に出ていかなければならない。
ストレスと緊張に満ちた社会と交渉を保っていかなければならない。
住宅は、そのための準備をする空間でもある。
リラックスして一日の心身の疲れを取り除いたら、今度は集中することも必要だ。
明日に備えて、勉強するにしても遊ぶにしても、また食事をするにしても眠るにしても、雑念に惑わされることなく、それに没頭できる空間であって欲しい。
だが、明日もまた出かけるとして、明日は一体何をしよう。
私たちは、全く無目的で充実した日々を送ることはできない。
そこでまた、住宅は家族一人一人の、あるいは家族全体の、目標を設定する空間でもある。
今日一日の出来事をそれぞれ思い、みんなが集まってコミュニケーションを深め、大きな目標と、それを実現するための小さな目標を確認し合えるような空間。
人間にとっての、この基本的ともいえる住宅の条件は、古代人の洞窟住居にあってもすでに満たされていたに違いない。
男は狩りに、女は採集に疲れて戻り、子供はまた遊び疲れて戻る。
暖かい焚火の炎、うまそうな肉の匂い、ゆったりと寝そべる事のできる熊の毛皮の敷物。
やがて、男は明日に備えて矢じりを研ぎ始め、女は木登りで破れた子供の衣服を繕う。
その子供はといえば、入り口の月明かりの中で、拾い集めた小石の整理に余念がない。
女が男に言う。
「このごろ魚を食べていないから、明日は魚を獲ってきてくれない?」
男が女に言う。
「薪が少なくなったから、明日拾ってきておいてくれないか?」
そして子供は、
「まだ緑の石がないから、明日はそれを探そう」
とまあ、こんなことを想像していると、住居空間での精神活動、すなわちリラックスし、集中し、目標設定する、という要素は、人間が何かをしようとするときに欠かせな基本的な要素ではないかと気がついた。

結果、住宅は「メンタルトレーニング場」でなければならないと言う事にも。

スポーツにせよ、学習にせよ、何かをうまく成し遂げようとすれば、まずリラックスし、次に集中し、そして目標設定する。
そうしてはじめて行動を起こすことができるのではないだろうか。
古代人は、生き抜いていくという大きな目標に向かって、おそらく淡々とこの三つの作業を行っていたのだろう。
ところが現代は、いいのか悪いのか、わけのわからない情報洪水の中に、人が本来持ち続けなければならない単純で明快な三つの作業が埋もれ、すっかり忘れ去られてしまっている。
これを取り戻すのは案外難しい。
「リラックスしろ」「集中しろ」「目標を持て」
たびたび聞かされる言葉だが、これこそ、「言うは易く、行うは難し」の最たるものではないか⋯⋯。

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